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五味洋治のページです。主に韓国での北朝鮮関連報道を訳していますが、日本語で紹介されない記事を私の目でセレクトしています。私の執筆活動、経歴についても掲載しています。日本のメディアが伝えていない細かなものまで拾っています。私がかつてここに書いた金正恩の性格分析は今も十分通用します。コメントは実名以外受け付けません。メールマガジンも書いています。  http://foomii.com/00123

2019年2月18日月曜日

書評 北朝鮮 おどろきの大転換(河出書房新社)★4つ

韓国のテレビ局KBSが制作した特別番組の書籍版である。お金と時間をかけただけに、興味深い記述と、専門家の証言が並んでいる。

内容は、金正恩朝鮮労働党委員長本人の思考、側近たちの変化、海外でドル稼ぎをしている「ドルヒーローズ」たちのルポの3つに分かれている。

まず正恩については、その演説の中身をセマンティック・ネットワーク分析した。

これは、単に言葉の出現回数をカウントするだけではなく、言葉のつながりを分析し、どんな言葉に重きを置いているかを分析するものだという。

その結果、偉大、全盛期、朝鮮労働党、革命、強盛復興などの言葉が浮かび上がった。KBSの取材陣は「祖父・金日成時代への郷愁がうかがえる」(70P)と分析している。

これは、北朝鮮が経済的にも南に優位だった時代だ。正恩は、その再現を夢見ているのだろう。しかし本書によれば、正恩は、必然的に交渉の場に出てこざるを得ないという。

それは海外への出稼ぎ者が、制裁のため帰国していること。

さらにアメリカによる国際的な制裁で外貨不足に陥りつつあり、「早ければ2018年に外貨危機に陥る可能性がある」(173P)からだという。

外貨不足は、確かに北朝鮮の首を絞めることだろう。しかし、一方で北朝鮮はプライドのためなら、国内がどうなろうが構わないと考える国。経済的理由だけで妥協するとみるのは早計だろう。

あとひとつ、金雪松という女性に言及しているのが興味深かった。この人は、金正日総書記の長女で、ほとんど外に出てこない。顔も分からないが、多くの脱北者が、彼女こそ「影の実力者だ」と述べているという。

そして、金総書記自身、2001年にモスクワを訪問したさい、ロシアの極東全権代表のプリマコフに「自分の後継者として20代の娘を考えている。政治家の手腕があると話していた」と述べたことだ。

この話自体は、以前から知られているが、当時、末娘の金与正は10代だったので、多くの専門家は、この女性が当時20代半ばだった金雪松の可能性があると見ているのだという。

これは驚きだった。もちろん与正を指しているという専門家もいる。
KBSが改めて確認した内容だから、「20代の女性」とプリコフスキーが聞いたのは事実なのだろう。
金雪松は、北朝鮮の中で、一体どんな役割を果たしているのか。

全体的に分かりやすい。値段は高いが番組のキャプチャーも豊富に使われており、買って損はない。

お勧め度★★★★(5点満点)
メルマガより転載

https://foomii.com/00123/2019012317000051475

2019年2月7日木曜日

北朝鮮への態度が180度変わったトランプ大統領 一般教書演説


ドナルド トランプ米国大統領が5日(現地時間)一般教書演説で言及した北朝鮮関連の部分は昨年に比べて大幅に減った。
英語字水路は540字で昨年(2千483字)の約5分の1水準だった。

原文

As part of a bold new diplomacy, we continue our historic push for peace on the Korean peninsula. Our hostages have come home, nuclear testing has stopped, and there has not been a missile launch in 15 months. If I had not been elected president of the United States, we would right now, in my opinion, be in a major war with North Korea.

Much work remains to be done, but my relationship with Kim Jong-un is a good one. Chairman Kim and I will meet again on February 27 and 28 in Vietnam.



しかし発言ののトーンは否定的内容から肯定的雰囲気に180度変わった。

昨年は北朝鮮の核・ミサイル威嚇と人権を指摘しながら厳しい批判を重ねたが、今年は威嚇減少と関係改善,2次北米首脳会談開催に力点をおいた。

トランプ大統領はこの日演説の後半部で国家安保と外交問題を取り上げ論じながら「大胆で新しい外交の一環で私たちは朝鮮半島の平和のための歴史的な努力を継続している」としながら北朝鮮問題を取り上げ論じた。

トランプ大統領は北朝鮮に抑留された人質らが戻ったことや、北朝鮮の核実験が中断され。15ケ月の間ミサイル発射がなかったと成果を挙げた。

「私が大統領に選出されなかったとすれば私たちは多分今北朝鮮と大きい戦争を繰り広げている」と自慢した。

トランプ大統領は2次北米首脳会談と関連しては、次のように述べた。「まだなすべきことがたくさん残っているが,金正恩委員長との関係は良い」として「金委員長と私は27日と28日ベトナムでまた会う」と話した。

今年の演説では、金正恩北朝鮮党委員長は2回言及された。

昨年は北朝鮮という表現が7度登場した。
内容的にはトランプ大統領は北朝鮮の核・ミサイル威嚇と人権に焦点を合わせていた。

当時彼は「北朝鮮の無謀な核兵器追求が私たちの本土をすぐ威嚇するだろう」「私たちはそんなことが起きないように最大の圧迫作戦を繰り広げている」と明らかにした。

また彼は「どんな政権も北朝鮮の残忍な独裁よりさらに完全で残忍に自国市民を弾圧しなかった」として北朝鮮人権を浮び上がって特別ゲストで参加した北脱出者チ・ソンホ氏を紹介した。

トランプ大統領は2分以上を割愛して,チ氏の北脱出過程を詳細に伝えた。

聴衆の起立拍手にチ氏が松葉杖を聞いてうなずく返事をした姿は印象的な場面だった。

チ氏に対する言及に先立ち北朝鮮に長期間抑留されて米国に送還された直後死亡した米国人大学生オート・ワムビア事件を取り上げ,北朝鮮の残虐性を浮び上がることもした。


コーツ米国家情報長官は29日、上院情報特別委員会の公聴会で「北朝鮮指導部は体制維持のために核兵器が不可欠とみている」と述べ、北朝鮮が核開発を完全に放棄する可能性は「考えにくい」と指摘した。2月に予定される2回目の米朝首脳会談を前に、北朝鮮の非核化の意思に疑問を呈した形だ。

コーツ国家情報局(DNI)局長は29日(現地時間)、議会上院情報員会聴聞会で「北朝鮮は、米国と国際社会から譲歩を引き出すために部分的な非核化措置に関する交渉を追求している」「北朝鮮はWMD(大量破壊兵器)と関連する挑発的行動を中断し、核ミサイルと核実験を1年過ぎて実施せずに核施設の一部を解体した。金正恩は朝鮮半島の非核化に対しオープンである事を引き続き見せている」と述べた。

しかし、その一方で「現在我々は、北朝鮮がWMDの力量を維持しようとしており、核兵器と生産能力を完全に放棄しないものと評価する。なぜならば、北朝鮮の指導者らは究極的に核兵器を政権の生存においてとても重要なものとするからだ。我々の評価は、完全な非核化と矛盾するいくつかの活動の観察に裏打ちされている」と主張した。

コーツ局長は聴聞会に先立ち提出した報告書でも、「北朝鮮は、外交的な介入と制裁国に対する報復圧迫、直接制裁回避などを通じて、米国が主導する圧迫キャンペーンの努力を継続して緩和しようと努力している」と主張してみせた。

国防情報局(DIA)首長のアシュリー中将も同聴聞会で、「1年前に存在した(核)能力と脅威は依然としてそこにある」と評価した。

聴聞会には、コーツ局長とアシュリー局長の他にも、ハスペルCIA局長、ポール・ナカソネ国家安保局(NSA)局長兼サイバー司令官などが出席、朝鮮問題だけでなく、イラン問題、ISIS問題など当面の諸外交懸案に関し、悉くトランプ大統領と対立する見解を示したという。

これを受けて、ロイター通信は「北朝鮮が核兵器を放棄するように思えないとするコーツ局長の評価は、トランプ大統領が北朝鮮と大きな進展があるという主張と明らかに矛盾するだろう」と報じた。

AP通信も「トランプ大統領は、シンガポール首脳会談以後、北朝鮮の脅威がないと主張したが、コーツ局長やその他の情報官僚は、全く違うように見ている」「トランプ大統領が2回目の朝米首脳会談での目標を達成できるかどうかについて疑問を投げさせる部分」と説明、AFP通信は「トランプ大統領の北朝鮮との交渉努力が実を結ぶとしても、北朝鮮がすべての核兵器を放棄しないように見えるというのが、米情報当局の判断」と報じた。

http://www.koryojournal.news/?p=2461より引用


こういった懐疑論に対してトランプ大統領は3日放送されたCBS放送プログラムフェイス ザ ネーションでのインタビューで情報当局の懐疑的分析について「私たちは(非核化に)合意する可能性もとても大きい」と批判したほか、ツイッターで情報当局者を批判した。

2019年2月3日日曜日

資産差し押さえで決着か 元徴用工訴訟

メルマガからの転載です
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今日韓関係を揺るがせている「元徴用工」問題は、どうやら時間切れ、強制差し押さえとなる可能性が出てきた。

関係悪化は長期化しそうだ。

元徴用工は韓国政府の認定で15万人いるとされる。現在、日本企業を相手に訴訟を起こしているのは数百人にとどまる。

このため、全体を救うには、ある程度の資金をプールし、個人の事情を調査してお金を支給するシステムが必要だ。これはドイツで、フォルクスワーゲンなど、戦時中強制労働を行った企業が作った基金をモデルにしている。

しかしドイツの場合は、1人あたり100万円程度が支払われたのに対して、韓国の判決は1人約1000万円の支払いを命じており、韓国の方が解決ははるかに難しい。

私が聞いている範囲では、在日韓国大使館では、日本の有識者に対して、「基金設立構想」を説明し、理解を求めていた。

韓国政府と日韓企業、あとで日本政府にも参加してもらう2+2形式だったという。

基金や財団構想は、慰安婦の時にも挫折しているが、これしかないというのが専門家の見立てだった。この構想に日本政府は乗り気ではなかったとされるが、最終的には妥協する考えだったようだ。

そんな中、韓国紙の朝鮮日報は26日付で、日韓の外交当局が韓国政府と日韓企業が参加する基金設置を検討していたが、大統領府は「韓国政府が乗り出すことではない」と反対し、検討が中断されたと報じ、大きな波紋を広げている。

この報道について韓国政府は、「基金という発想自体非常識」とのコメントを発表したという。

これは事実上、この報道を認め、韓国政府は何もしないということだ。

昨今の日韓関係を考えると、文在寅政権は、日本のためにわざわざ批判を浴びるかもしれない基金など作れるかということのようだ。判決は、あくまで日本企業の賠償を命じている。

しかし、1965年の日韓請求権協定の筋から言えば、韓国政府の責任で対処すべき問題と言わざるを得ない。

さらに、韓国政府が訴訟に介入しないと分かれば、徴用工本人が生きている場合、追加訴訟を行うだろう。ただ、その数はそう多くないだろう。戦争中10代だとしても、すでに戦後70年以上経過しており、相当な高齢になる。

一方で訴訟関係者によれば、被告となった日本企業は和解に向けた動きを全く見せていないという。

韓国も日本も放置すれば、必然的に最高裁の判決に従って、日本企業(まずは新日鉄住金)の財産が差し押さえられ、強制売却され賠償に充てられる。

レーダー照射問題も深刻だが、訴訟は確実に数年続く問題なので、日韓の関係は本当に戦後最悪になるだろう。

ただ、2月からの米朝首脳会談の結果、北朝鮮の非核化が進む事態になれば、このニュースは、今ほど注目を浴びなくなる可能性もある。
なんのことはない。金正恩朝鮮労働党委員長の動きが、日韓関係の重要なファクターになりそ