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2011年12月14日水曜日

管理できない北朝鮮を管理するということ レオン・シーガル コリアファイルより転載

社会科学評議会 北東アジア安全保障プロジェクト・ディレクター

ハフィントン・ポスト 2011年10月31日

北朝鮮との真剣な交渉を拒むことによって、オバマ政権は新たな対立への運命的な一歩を踏み出した。
先週ジュネーブで行われた二日間(10月24~25日)の会談の後、米国と北朝鮮の交渉担当者たちは、会談結果について平静を装っていたが、米国務省のビクトリア・ヌランド報道官は「ある程度、隔たりは狭まったが、劇的な進展はなく重大な問題が依然として存在する」とはっきり述べた。たとえ再び会談が行われても、ワシントンの気持ちが変わらない限り、それは短命に終わりそうである。
ピョンヤンは交渉に対してオープンな姿勢でいるようだ。会談直前の報道機関とのインタビューで金正日は、中国とロシアにすでに述べたこと、すなわち「6者会談は前提条件なしにすみやかに再開すべきである」ことを再確認した。かつて彼は、交渉が行われていた間、北朝鮮がミサイル発射と核実験を凍結すると約束していたが、「前提条件なし」ということは、プルトニウム・プログラムの再開に必要な新しい燃料棒を搬出するばかりか、ウラン濃縮を凍結し寧辺核施設への査察官の立ち入りを許す意志があるという北側の姿勢を強調したことになる。ただし、それはエネルギー支援という見返りがある場合のみである。
ワシントンは、彼が語ったことが外交上のギブ・アンド・テイクを意味するものなのかどうかテストする代わりに、ピョンヤンが前提条件を満たすべきだと言い張っている。ある政府高官は、会談への復帰を語りながらも「われわれには悪行に報酬を与える用意はない。また、われわれは彼らが責任を果す誠意を示さない限り、次の段階へ進む用意もない。すなわち、これは率直に言えば、マネージメント(管理)戦略である」と語った。政府当局者が情勢のマネージメントについて述べる時は、政策を持ち合わせてはいない。
米国側の交渉責任者であったスティーブン・ボスワースが退任した。彼を引き継ぐ国際原子力機関(IAEA)担当大使であったグリーン・デービスは、政策の空白を露呈する可能性がある公聴会を損なうことなく、これを自分の課題に付加えるかもしれない。
トラブルを食い止めるための取引を避けることによってワシントンは、対話に失敗した過去の北朝鮮との交渉が成功していたという苦労して得た教訓を無視している。ピョンヤンは1991年の北南共同宣言と94年の枠組み合意で約束した通り、12年間プルトニウムの再処理を中断し、1999年にウィリアム・ペリーに約束した通り、7年間ミサイル発射を留保した。北朝鮮との取引でワシントン側がそもそもみずからの義務を果たさなかった後の長い間のことである。
北朝鮮はさらなる対話に合意するかもしれないが、長い間ではないであろう。その間にもウラニウムの濃縮は続けるであろう。来年、北朝鮮はプルトニウム・プログラムに再着手し、ミサイル発射実験を再開し、保有しているとされる新たな核弾頭の実験を行う可能性がある。北朝鮮が、わずかな核爆弾でも保有することはとても良くないし、弾道ミサイルで運搬できる数十の核弾頭を保有することはさらに良くない。
北朝鮮の際限のない核武装は、地域と世界における米国の安全保障にとって重大な結果をもたらすであろう。それは核拡散を阻止するというオバマ大統領の決意に疑問を投げかけるであろう。それはまた、短期的には米国の同盟関係を強化するが、結果的には、南朝鮮と日本に自国の安全保障を米国に頼っていることについて疑問を抱かせることになろう。すでにソウルの一部では、米国の核兵器を朝鮮半島に戻すこと、あるいはさらに悪いことに、南朝鮮の核兵器プログラムの再開-それはワシントンが過去に2度阻止することに成功した-を求めている。それはまた、米国を信用せず核武装を好む東京の右翼ナショナリストの力を強めることになろう。もっとも悪いことに、それは米国が取引を拒否することを知っている中国とロシアが支持したがらない、国連による追加制裁の機運を促すことになろう。それは、ワシントン内に中国とロシアに対抗すべきとの圧力を生み、それによって、同盟諸国を危険にさらすだけのアジアにおける新しい冷戦が始まることにもなりかねない。
なぜ、オバマ政権は交渉を拒むのか?その答えは党派政治にある。対話に向けた動きについて、ジョン・カイル上院議員とイリアナ・ロス‐レイティネン下院議員率いる共和党の人々はピョンヤンとのいかなる取引にも反対すると警告した。
米国はもはや、国家の安全保障上の利益を無視し、国内政治が外交政策を駆り立てることを許容するほど豊かで強力な国ではない。南朝鮮のような同盟国は、望むものを得るためにワシントンでロビー活動を行うことを学んだ。この歪んだ政治的プロセスによって、ワシントンは時々、同盟を他の目的のための手段というより、むしろ目的そのものとして扱うようになった。
北朝鮮のように非常に弱い国々は危険を覚悟で自国の安全保障を無視する。一部の観測者たちは北のイデオロギーか指導者の交代期の国内政治に動かされているかのように誤解しているが、ピョンヤンは安全保障を追及するうえで妥協したことがない。北朝鮮は、1980年代後期まで、同盟国である中国とソ連を互いに競わせていたが、ソ連が崩壊し中国が資本主義の道に進むと、自国の安全保障のために米国、南朝鮮、日本との長年の敵対関係を終わらせる道へと進んだ。同時に、北は核兵器とミサイル開発を強化しその行使を準備し、そして行使した。北は自国の兵器プログラムをアメとムチ-協力を得るための誘引とワシントンを友人にするための脅し-として利用してきた。北が再び中国とロシアを競わせ、兵器の増産と改良に備えている今、その戦略は変わりつつあるようだ。
衝突を回避する唯一の希望はソウルにある。李明博大統領はワシントンへの公式訪問の際ピョンヤンに圧力をかけて非核化させるという、いわゆる「原則的立場」を再確認したが、ソウルにおける政治の風向きは変化しているようだ。4月の国会議員選挙と12月の大統領選挙で負けるかもしれないと危惧している与党議員たちは、李に強硬派の統一相の解任と北の開城工業団地への経済協力の強化を訴えるようになった。しかし、ソウルにおける好転は、すでに手遅れで金正日の打つ手を止めることができていないようだ。
管理できないものを管理することは出来ない。もし、ワシントンが北朝鮮からただで何かを得ると主張するなら、得るのはトラブルだけであろう。("Managing an Unmanageable North Korea" by LEON V. SIGAL, Director of the Northeast Asia Security Project at the Social Science Research Council, 0ct.31 2011, Huffington Post.com)

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