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五味洋治のページです。主に韓国での北朝鮮関連報道を訳していますが、日本語で紹介されない記事を私の目でセレクトしています。私の執筆活動、経歴についても掲載しています。最近のお勧めは、北朝鮮の軍事関連報道です。日本のメディアが伝えていない細かなものまで拾っています。私がかつてここに書いた金正恩の性格分析は今も十分通用します。筆者へのご連絡はこちらをクリックしてください。コメントは実名以外受け付けません。

2012年11月4日日曜日

金正恩体制1年の評価と、日米韓の今後の対応

11月6日に早稲田大学のセミナーで発表する内容です。
東京新聞編集委員 五味洋治 gomi42@gmail.com
金正恩氏は、当初経験不足なうえに、父親譲りの過激な部分があるとメディアで伝えられていたが、実体は違っていたようだ。
父である金正日国防委員長の業績を引き継ぎながらも、新しい国家、指導者像を目指していると考えられる点がみられる。しかし、それは正恩氏の権力基盤が固まっていない段階で始まっており、危うさもはらんでいる。
新しい国家、指導者像については3つ指摘できる。
最初は、磐村氏も指摘している「党の指導力強化」だ。経済の分野にも大きな利権を持っていた軍部のトップを解任し、党の力を強め、経済政策は内閣に集約させたと伝えられる。
父の故金正日氏は、国防委員会を通じて統治を進め、軍の力が急速に拡大したが、正恩氏は基本的に「先軍政治」を受け継ぐ一方、実質的には、経済改善措置を取り、国の立て直しを図っているようだ

これに関連し、6・28措置と呼ばれている経済改善指示がある。一部で実施されているとも伝えられる[1] いったんは実施するようにとの指示が出されたが、反発する人たちが多く、政府内部での検討が続いている[2]という。今年12月から本格的に導入されるとの報道もあり、不透明な情勢だ。正恩氏の権力基盤の弱さと関係がありそうだ[3]
2つ目は、最初の理由と表裏一体だが、軍の権限を抑えることだ。
10月29日に、正恩氏が金日成軍事総合大学で開かれた故金日成主席と故金正日国防委員長の銅像除幕式で行った演説の中で、「党と首領に忠実でない人はいくら軍事家らしい気質があり、作戦と戦術に秀でているとしてもわれわれには必要ない」[4]と発言した。
7月に電撃解任された李英稿総参謀長の解任を意識した発言だろう。ここでも党への忠誠が強調されており、軍を公開的に牽制した

3つ目は公開活動の増加だ。米国の専門家によれば、201112月の金委員長死去から8か月の間、正恩氏の公開活動は合計108回だった。金日成主席死去直後の約3年間、金総書記の公開活動は88回に過ぎず、正恩氏の公開活動のペースは約4倍となる計算だ[5] どうして公開活動を増やしているのかには様々な見方があるが、私は正恩氏の指導者としての力量不足を補う意味があると見ている。

また、同じ米国の専門家が、正恩氏の公開活動に同行した幹部の肩書きを分析したところ同行者の46%が党幹部で占められた[6]という。同行者は一般的に複数の肩書きを持っており、分類方法は完全とは言えないだろうが、正恩氏の権力の軸足が「朝鮮労働に移っているとみることもできそうだ。
박재적博士が指摘する米国の安保戦略については、対等する中国を意識し、従来からの同盟国、友好国を統合し、軍事演習を通じて協力体制を築こうとしているとの指摘に同感する。
しかし、米国はオバマ政権の下で「戦略的忍耐」「挑発には見返りを与えない」を基本にしている。オバマ氏自身も演説の中で北朝鮮に触れることはほとんどなく、強い関心は持っていないようだ。
今年2月29日の栄養補助食品支援を巡る米朝合意が、北朝鮮のミサイル発射で霧散した。このため米国内には北朝鮮との交渉は結局徒労に終わるという悲観的な見方が強い。むしろ、国際社会の中で急速に影響力を増す中国の戦略的負担として、中国に北朝鮮管理を任せていく傾向が強い。米国の朝鮮半島専門家は、米国のより積極的な関与を訴えている。[7]
中国は経済的に北朝鮮との結びつきを強めているが、あくまで民間ベースを中心にしていくだろう。正恩氏の訪中は状況から見て、来年春になるのではないか。

中国は経済の減速が伝えられ、特にエネルギーの8割を依存している石炭価格の低落が目立つ。[8] すでに北朝鮮の対中輸出品である無煙炭などの需要に影響が出ており、北朝鮮はさらに困窮し、日本や韓国に積極的に接近する可能性がある。

[1] 2012年11月1日 自由アジア放送http://www.rfa.org/korean/in_focus/wage-11012012093353.html
[2] 平壌を行き来する在日朝鮮人商工人への、筆者の聞き取り
[3] 2012年10月30日 自由アジア放送 http://www.rfa.org/korean/in_focus/newcontrol-10302012080815.html
[4] 2012年11月2日 韓国YTN http://www.ytn.co.kr/_ln/0101_201211021617425183
[5] Luke Herman KOREA ECONOMIC INSTITUTE http://blog.keia.org/2012/11/comparing-the-successions-kim-jong-il-vs-kim-jong-un/
[6] 同上
[7] http://www.cfr.org/north-korea/north-koreas-missiles-nukes-false-promises-respond/p27988
[8] 石炭価格の指標、環渤海動力煤価格が急落、やや持ち直す。10月17日 中新網http://big5.chinanews.com:89/gate/big5/finance.chinanews.com/ny/2012/10-18/4256264.shtml




























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