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五味洋治のページです。主に韓国での北朝鮮関連報道を訳していますが、日本語で紹介されない記事を私の目でセレクトしています。私の執筆活動、経歴についても掲載しています。最近のお勧めは、北朝鮮の軍事関連報道です。日本のメディアが伝えていない細かなものまで拾っています。私がかつてここに書いた金正恩の性格分析は今も十分通用します。筆者へのご連絡はこちらをクリックしてください

2014年4月8日火曜日

最近の北朝鮮と中国 薄れる制御装置の「神秘性」


(中朝の歴史)

かつて中国は、北朝鮮に神秘的な影響力を持っていた。それが近年失われている。それはどうしてなのか。以下は私が最近ある場所で話した内容をまとめたものです。


 中朝の歴史をみると、大きく3つの節目があった。朝鮮戦争のときに一緒に戦って友情が生まれ、血で結んだ友誼という言い方がされるようになった。この時には、北朝鮮よりも中国の方が熱っぽかった。

その後、中国は文化大革命において、紅衛兵が北朝鮮の指導者たちに厳しい視線を向ける。皇帝のような生活をしていると徹底的に批判した。これに北朝鮮が反発し、中朝国境で小競り合いが百回以上あり、死者も出るぐらい関係が悪化した。これが一回目の中朝関係の危機、もしくは冷却期間だろう。

二回目は1992年に中国が韓国との国交正常化を決めた時で、北朝鮮は不快感を露骨に示した。金日成氏と、韓国との国交正常化方針を伝える中国の銭其琛外相の会見は数分で終わり、史上最短の中朝首脳の会見といわれている。

その後7、8年の冷却期間があったが、両国が歩み寄り、関係が復活し始めた。ところが、2006年、2009年の北朝鮮の核実験を契機として、中国が北朝鮮との付き合い方を再検討した結果、北朝鮮は安保上必要である、そのかわりWIN-WINで行こう、お互いが経済でプラスになる方向でやろうという方向でまとまったようだ。

 企業が中心となり、政府が道筋をつけ、市場経済でやって行こう、という三原則をたてたといわれている。胡錦濤氏の時代から習近平氏の時代になると、北朝鮮との間で動きが全く止まっている。

金正恩氏も一度も中国に行っておらず、中朝の大きな構図が変わってきている。中国はこれまで北朝鮮に大きな影響力を持ち、六カ国協議を通じて北朝鮮を抑えようとしていたが、今は韓国と親密になり、その中で北朝鮮を扱っていこうとしている。

(北朝鮮の中国に対する敵対意識)
 北朝鮮は中国に対し潜在的に敵対意識を持っている。金日成時代には中国人脈を大規模に粛清したこともある。中国のソウル五輪参加で関係が悪化し、中国がいやがるように、わざと台湾へミサイル販売を試みたこともあると言われている。

 昨年末、ナンバー2の張成沢氏が処刑された。なぜ処刑されたのか。中朝貿易、平壌の都市建設にあたる内務軍の掌握、取り巻きの拡大の三つの理由があるといわれており、金正恩氏がこれらに対し危機感を持ち、処刑を決めたといわれている。

その後も張一派の処分が続いており、家族を含め数千人規模といわれている。

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AFP、公安調査庁資料より作成

 

 その背景には中国がいることを意識していたと思われる。張成沢氏は中国にも度々行っており、中朝国境の経済特区の開発を担当していた。中国とのパイプ役であった。北朝鮮は経済が必ずしも楽でないこの時期に、あえて張成沢氏を処刑したのは、中国に対する潜在的な脅威感、敵対意思が大きくあったのではないかと思う。

(中国の北朝鮮への対応と貿易関係)
 最近、中国は北朝鮮に対して厳しい姿勢を取っている。過去に中国は2006年の国連決議1718、2009年の国連決議1874、2013年には国連決議2094に賛成した。

北朝鮮の人工衛星や挑発的な発言、核実験については、ことごとく反対、批判、もしくは制裁に賛成している。以前は北朝鮮関係の事案が国連にあがると、中国は徹底抵抗したが、最近は即時に批判、制裁、そういう時代になっている。昨年9月には北朝鮮への輸出禁止を発表、口座を凍結したり、目に見える行動もしている。

 

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各種報道より作成

 

 貿易面では中国は北朝鮮の資源に注目している。黒鉛、鉛、金、無煙炭等があり、2006年くらいから中国の企業がどんどん進出している。北朝鮮にとって中国はなくてはならない国になりつつある。

 また、中国から毎年50万トンの原油が北朝鮮に送られている。この50万トンは兵器を動かす油として使われているのではないかといわれている。中国からの油がないと軍事国家である北朝鮮は動かない。

 中朝の貿易額は一貫して増加している。替わりに日本と韓国との貿易は減っている。北朝鮮から中国への輸出は鉱物資源、簡単な衣料品、食品の材料などが多い。中国からは電機製品、住宅機器等がいっている。北朝鮮は中国との貿易が2011年には全体の90%を占めており、中国への依存度はどんどん高まっている。ただし、北朝鮮には中国への対抗意識、敵対心、批判的な見方が根強くあり、90%依存というのは、北朝鮮にとって非常に居心地が悪い。

これからは何とか方向転換し、中国だけに頼らない貿易体制をつくっていきたいというのが、今、韓国や日本とさかんに対話を始めている理由ではないか。

 

 

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 韓国とは、工団稼働と観光資源により外貨獲得につなげたい。日本とは制裁解除が実現し、北朝鮮と日本の間のものの往来を活発にさせれば、経済にプラスになると読んでいるはずである。

これから行われる日朝協議の中で、日本との経済関係強化を狙っていると思われる。 各国の北朝鮮制裁はこの通りになっている。

 

(北朝鮮の最近の状況と今後の4つのシナリオ)
 

金正日氏の葬儀の際に車の周りにいた最高幹部の内、5人は粛清もしくは引退させられた。二人は80代で、実質的にパワーのない人たち。金正恩氏がこの国の中では唯一無二の指導者で、スーパーパワーを手にしている。その分、不安定さも高まっている。特に軍人の幹部を一年もたたないうちにどんどん入れ替えている。軍の中に不満が生まれ、非常に可能性は小さいにしても、クーデターが起こるのではないかという見方もある。ただ、軍に対する締めつけは非常に強いので、簡単にはできない。金正恩氏がこれからどうなるのか、非常に危ういと思う。

 

 今後北朝鮮はどうなっていくのか。中国との関係でシナリオが四つある。一つ目は「挑発で危機脱出」。国内の食糧事情が厳しいため、外に敵をつくり、国内を引き締めていくのではないか。

二つ目は「孤立打開に動く」。例えば、韓国と対話を続け、日本との関係を改善し、中国も望んでいる六カ国協議に参加をはかる。これが一番良いシナリオであるが、悪いシナリオでは、

三つ目の「内部統制を強化」がある。粛清を進め、恐怖政治をするのではないか。団結力は高まるが、脱北する人が増え、国内が混乱するのではないか。

一番悪いシナリオは四つ目の「不安定化から崩壊」。例えば軍がいうことを聞かなくなる。最前線の舞台では去年より7倍も8倍も脱営兵が増えている、という報道もある。「不安定化から崩壊」というのが一番望ましくなく、これは中国にとっても最悪のパターンである。

1300キロの国境はほとんどが山。北朝鮮が崩壊した時、そこに兵を配置し、中国に流れ込んでくる人を抑えることは不可能。では、何をするかというと、人民解放軍が勝手に北朝鮮側に入る。人道援助ということで、食糧を配給する。

北朝鮮にいれば我々が食料を与えるという安心感を与え、北朝鮮が崩壊、危険な状態になっても、北朝鮮人が逃げないようにする。もし逃げるような場合は、容赦なく射殺する等の厳しい対応に出てくると思われる。

 

 

(北朝鮮の突発事態に中国はどう動くか)
 

 北朝鮮が非常事態になるのは、六つのパターンがあるといわれている。

 

①大量破壊兵器のコントロールができなくなる。②金正恩氏の失政が続き、交代させられる。③テロなどが契機となり内戦になる。④韓国人を何かの拍子に人質にして韓国と緊張が高まる。⑤食糧難で脱北者が大量に発生する。⑥大地震や大雨、飢饉等の大規模な自然災害が引き金になる。

 このような場合、瀋陽軍区にいる軍人等が人道支援として北朝鮮国内に入り込み、核の汚染、核物質の除去に取り組む。中国の軍は延坪を早く抑え、テロ防止のため核物質が中国に流れ込むことを防ごうとする。王毅外相は「レッドライン」という言葉を使って、北朝鮮に核放棄を迫ったが、これも中国の危機感といえる。

 

 最近、中国では韓国中心の統一やむなしという声が広がっているといわれている。昨年、中国で党学校の幹部が「北朝鮮切り捨て論」をフィナンシャルタイムズに寄稿し、大きな反響を呼んだ。その後彼は解雇されたが、身辺に異変はないようだ。

 伝統的な考え方は、北朝鮮は戦略的な緩衝地帯であり、在韓米軍も上がってこられなくなる。「不安定化から崩壊」というのが一番望ましくなく、これは中国にとっても最悪のパターンである。

 1300キロの国境はほとんどが山。北朝鮮が崩壊した時、そこに兵を配置し、中国に流れ込んでくる人を抑えることは不可能。では、何をするかというと、人民解放軍が勝手に北朝鮮側に入る。人道援助ということで、食糧を配給する。北朝鮮にいれば我々が食料を与えるという安心感を与え、北朝鮮が崩壊、危険な状態になっても、北朝鮮人が逃げないようにする。もし逃げるような場合は、容赦なく射殺する等の厳しい対応に出てくると思われる。

 

 非常事態の際に中国が中朝国境に大量の軍を貼り付け、いつまでも北朝鮮の対応を行い、油や食料を無償支援しなければならない。プラス、マイナスで見ると、むしろ北朝鮮がなくなり、韓国中心の統一をしても、むしろ国益にとってプラスなのではないかという声が高まってきている。

 これが、中国が朴槿惠大統領と非常に親しくつきあう理由なのかもしれない。

つまりできるだけ韓国を中国に引き寄せておき、統一されても中国に近い韓国政府に対し中国の意向を反映させ、統一の前に在韓米軍を撤退させる。中国は秘密裏に、北朝鮮の非常事態に備えるプランがあると報道されているが、当面は6つのプランが考えられる。maintaining(現状伊維持),rebalancing(再配置),abandoning(放棄),reforming(改革),interfering(介入),cooperating(協力)だ。専門家は最後の協力がもっとも中国の国益にそった政策だと判断している。

米国も北朝鮮の非常事態に備え、5029というプランを持っているとされる。

 今は戦時作戦統制権をアメリカが握っており、戦争になったときに在韓米軍が中心となり指揮命令することになっているが、2015年にはこれが韓国軍に返されることになっている。これを機に韓国の中の在韓米軍を一斉に撤退させる。そういうアメリカの影響力を一切削ぐというシナリオを、中国は念頭に置いているのかもしれない。

 最後にそういう政権交代や内戦等の非常事態になった場合、金正男氏の出番があるかもしれない。金正男氏は中国にいる時は中国の手厚い保護の下におり、聞いたところでは、広州や上海、北京等の大きな経済都市を中国政府の協力で視察している。

今後、北朝鮮で突然指導者が失われるような場合には、彼が北朝鮮の新しいリーダーの一人として送り込まれる可能性もあるのではないかと見ている。ただ、彼とは最近連絡が取れていない。

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