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五味洋治のページです。主に韓国での北朝鮮関連報道を訳していますが、日本語で紹介されない記事を私の目でセレクトしています。私の執筆活動、経歴についても掲載しています。最近のお勧めは、拉致再調査、金正恩の健康、張成沢処刑、崔竜海失脚関係の韓国報道です。日本のメディアが伝えていない細かなものまで拾っています。私がかつてここに書いた金正恩の性格分析、内容は今も十分通用します。筆者へのご連絡はこちらをクリックしてください

2015年2月17日火曜日

拉致調査の現状と課題 徳島での講演概要です

拉致問題啓発県民集会
「現在の北朝鮮体制の内実と、北朝鮮から見た日本人拉致」
 

●北朝鮮の広さや経済規模は?
12万平方メートル、北海道と東北を除いた本州の広さに匹敵します。人口は2300万人です。経済規模は約2兆円。これは徳島県の2・9兆円(1999年)より小さい額です。

●電気や食料が不足していると言われますが、北朝鮮の経済力はどの程度なんですか?
正確な統計はありませんが、韓国銀行の統計によれば2011年の1人当たり国民総生産(GDP)は904ドルと言われます。発電能力は750キロワットで、2011年発電量は503万キロワット、穀物生産量は2012年で529万8000トンでした。これは160万世帯分、大型発電所の発電能力から割り出せば発電所5基分にあたります。190万人の熊本県に相当します。ちなみに徳島県は78万人です。

●韓国との差はどのくらいあるんですか?
韓国統計庁が1月に刊行した北朝鮮の主要統計指標によると、北朝鮮の昨年の1人当たり国民総所得(GNI)は138万ウォン(14万8200円)にとどまっています。韓国は2870万ウォンと北朝鮮の20.8倍で、南北の差がさらに広がっています。

●軍事力の実態はどの程度ですか?
北朝鮮は現在世界第4位の巨大な軍隊を保有していまます。1位の中国は225万5000人、2位のアメリカは147万3900人、3位のインドは141万4000人、4位の北朝鮮は110万人となっています。

●なぜ国際社会から孤立し、軍事的挑発を繰り返すのですか?
北朝鮮は世界にわずかに残った社会主義国です。閉鎖的な体制を維持しており、国の安定、維持が最優先です。そのために核開発を進め、他国からの攻撃に備えているのです。われわれからは理解しがたいですが、彼らの論理です。さらに、経済困難から国民の視線をそらすため、外からの脅威を強調しているのでしょう。

●なぜ北朝鮮は拉致問題を起こしたのですか?
終戦直後、北朝鮮は韓国よりも経済的優位にありました。地下資源に恵まれていたためです。ところが、日本との国交正常化を果たした韓国が70年代にはいって急速に発展してきました。
韓国の事情を探り、特の政権をゆるがせ、北朝鮮への支持者を増やすためスパイを韓国に送り込むようになりました。
当初は自分たちの国民を教育して韓国に送り込みましたが、発覚して逮捕されるケースも多かったのです。このため、日本人や在日韓国人に偽装させることを考え出しました。それなら韓国のことをよく知らず、韓国の人たちと多少話し方が違っても怪しまれないためです。
日本語の教師として日本人を拉致しました。最初は孤独で生活している身寄りのない人を狙いましたが、その後は夫婦を拉致しました。精神的な安定が得られるためです。横田めぐみさんは、たまたま拉致犯行グループに見つかって連れて行かれたとされています。

●金正恩氏はどんな指導者ですか?
金正日総書記の3男です。まだ30を少し越えた若い指導者です。2年前の12月におじさんを「国家転覆罪」で処刑するなど、強権的な指導スタイルを取っています。この1年間、軍事挑発はしていません。1月に行った演説では、韓国との首脳会談を意向も示しました。拉致問題については具体的な発言をしたことはありません。

●昨年、解決済みとされていた拉致問題の再調査を受け入れたのは、北朝鮮側にどのような目論見があるのでしょうか?

3つ狙いがあります。
1つは、日本との関係改善を進め、人道支援を確保する。さらに将来、国交正常化が実現した場合には、韓国にも支払われたような有償、無償の経済援助を受けることです。
韓国の場合は50年前それぞれ2億ドル、3億ドルだったので、現在のレートになおすと数百億ドル(数兆円)になると言われています。これだけまとまった金額は日本からしかとれないのです。


2つ目は、安倍政権への期待です。支持率も高く、指導力の強い安倍首相は、長く政権にいる可能性が高い。このため過去十年間止まっていた拉致交渉の再 開に踏み切ったのです。


3つ目は、国内の人権弾圧に関する国際社会からの批判をかわすことです。
国連は、今年2月に北朝鮮の人権問題を告発し、金正恩の責任を問い、国際刑事裁判所にかけることを求める300ページ以上の調査報告書を発表しました。これを受け、昨年末に国連の安全保障理事会でも、初めて北朝鮮の人権問題が議題となっている。こういう動きをにらんで、日本との間で拉致という人権問題を話し合っている姿勢を見せて、人権批判をかわすためです。



●再調査に関して、当初の予想より特別調査委員会の初回報告が遅れるなど、現在に至るまで進展がありません。これはどのような理由が考えられるのでしょうか?



思惑の違いが表面化したと思います。特別調査委員会は遺骨、行方不明、日本人配偶者、拉致被害者の4分野で「同時並行で」調査を行うとしていました。
しかし日本は拉致最優先。北朝鮮は日本人配偶者、遺骨など、進めやすい部分から手を付けており、その食い違いが大きくなってきたのです。北朝鮮は当然、 拉致被害者の情報は最後の最後まで取って置くつもりでしょう。日本側は北朝鮮の調査の遅さにいらだち、拉致以外の進展や報告はいらないと北朝鮮側に 伝えており、報告遅れの原因になっています。


●今回の交渉では、実際にどのような内容の話し合いが行われているのでしょうか?


4分野の進展状況を日本側は聞いています。例えば特別調査委の陣容、調査内容、最初の報告を出すメドなど。日本側は、「拉致の報告以外はいらないので、拉致を進めよ」と強く申し入れています。


●現状において、再調査の報告が出るのは何月頃になると考えられるのでしょうか?
総連会館の売却先が決まり、一応日本国内の障害は取り除かれたので、3月頃には最初の報告が出るでしょう。調査は1年間なので、最終報告は7月になるはずです。



●今回の交渉を進展させるために、日本はどのようなカードを切り、どのように外交を進めていけばいいのでしょうか?


北朝鮮は今年、朝鮮労働党創建70年を迎え、さまざまな準備をしています。北朝鮮はこういう節目の年を重視している。国民に経済向上や、国の安全、 南北統一などで新たな希望や目標を提出しないといけない。このことを念頭に置き、圧力と対話のバランスを取って行くことでしょう。


例えば、拉致問題が進めば人道支援を行い、経済制裁を緩めることを明示する一方で、拉致調査が不十分なら国連の場で人権問題を追及すると緩急をつけて追い込んでいく工夫が必要だ。対話の中で、北朝鮮が日本と交渉することで利益がでると確信させることができれば、北朝鮮は必ず真剣になっていくと思います。



1月24日に神奈川県で講演した拉致被害者の蓮池薫さんは、北朝鮮が他の国との関係改善が進んでいるため、「日朝関係に積極的になる意味がなく なった」と分析。日本との関係では、「どれだけ多くの利益を得られるか、見返りをつり上げようとしている段階にある」と説明したました。そして、インフ ラ整備など、日本が積極的に協力して欲しいと話している。同感です。犯罪に対して見返りは必要ないという意見もあるでしょうが、強硬に出て交渉がストップしてしまうのは賢明な選択とは思えません。北朝鮮も交渉に前向きなので、このチャンスを最大限活かすべきでしょう。



●現在、拉致被害者のご家族の高齢化が懸念されています。今後、拉致問題を風化させないためにどのような方策が考えられるのでしょうか?


私は個人的には、今の日本政府が行っている北朝鮮との交渉の進め方は好ましくないと考えています。拉致だけに特化した場合、北朝鮮側が出し惜しみ し、調査全体が滞る。情報が出てこず、関心が低下し、結局問題がこじれていく危険があります。交渉を進展させていくために、拉致以外の部分でも積極的に情報を報告させ、北朝鮮を動かしていくことが必要だと思います。特に、日本人妻や、失踪者の情報が出てくれば、期待も強まるでしょう。
北朝鮮は、拉致の情報を出さず幕引きを図るとの見方もありますが、昨年、北朝鮮が自分から交渉再開を申し出てきたのだから、拉致被害者の情報も出す用意はしているはずです。

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