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2016年4月22日金曜日

北朝鮮で女性が果たしてきた役割とは 権力を支え、権力を揺るがす


  5回目の核実験を行う構えを見せている北朝鮮。「父親の金正日総書記よりも挑発的」とされる、最高指導者・金正恩氏の行動を理解しようと、各国は情報収集に全力を挙げているが、秘密のベールに包まれて、なかなか見えてこない。
 それならば、全く違う角度でアプローチしてみよう。そんな動機から私は今月、1冊の本を上梓した。「女が動かす北朝鮮」(文春新書)だ。あの国の権力者3人に、女性たちがどう関係し、影響を与えたかに焦点をあてたものだ。

 内容を語る前に、次期在韓米軍司令官に指名されているビンセント・ブルックス氏の言葉を引用しよう。

 ブルックス氏は4月19日、金正恩第1書記について、「父親に比べ、核プログラムの推進に熱心で、国際社会の懸念を無視する傾向がある」「第1書記の行動と、相談相手の不在から(北朝鮮は)不安定化の可能性が拡大している」と語っている。
 
 金正恩氏は、就任以来約4年で、約100人の党や政府高官を更迭もしくは処刑したと伝えられる。しかし、意外にも、親族の女性たちとは良好な関係を結んでいる。

 例えば妹の金与正。彼女は身辺の警護の責任者として兄の現地視察に必ず同行している。数少ない相談者として、支えているに違いない。会った人は多くないが、「活発だが、礼儀正しい」という評価を受けている。

 健康不安のある兄に万が一のことがあれば、金ファミリーの血統を受け継ぐ彼女が、権力の座に付くのは間違いない。中国は、北朝鮮の崩壊は望んでいない。金正恩氏の暴走が止まらなければ、若く、経験に乏しいものの、彼女への権力移譲を考えるだろう。

 妻の李雪主は元歌手だ。中国の習近平国家主席の妻も歌手として有名だった。中国を真似した訳ではないだろうが、正恩氏のイメージ作りに一役買っている。

 李雪主は、その発言がほとんど伝えられないが、公の場に夫に同行している。最高指導者の最も身近にいる人間といえる。われわれが想像する以上に、金正恩氏の強硬路線を支持している可能性がある。

 ただし、彼女に対する住民の反発も少なくない。ブランドものを身につけ、かなり裕福な生活をしていると推定されるからだ。正恩氏への反発が、妻の存在と絡んで増幅される危険性もある。

 もう1人、全く表舞台に登場しないナゾの女性がいる。金正日氏の長女、金雪松だ。40代になる彼女は、金正恩氏を経済政策の面で補佐していると伝えられる。

 神話の中のカリスマ指導者であった祖父の金日成主席や、その権力を引き継いで、国防力を高めた金正日氏。この2人も、女性関係に悩み、また、救われてきた。

 2番目の妻である成恵琳さんについては、彼女を知る関係者がソウルにおり、インタビューできた。彼女の素顔を記述している。

 在日コリアン出身の高容姫さんについても、日本に公演で来た時の貴重な写真や証言を拾っている。再び彼女に関心があつまるかも知れない。

 「北朝鮮には女性はいなかった」と言われるほど、女性の存在は低く、ないがしろにされてきた。しかし、1990年代の食糧難の時代、女性たちが市場に出て、モノの売買を行い、家計を支えた。

 家庭で女性たちの力が増しており、北朝鮮の当局も無視できなくなっている。また、北朝鮮を脱出する住民の7割は、生活力のある女性が占めている。

 体制の矛盾をアピールし、絶対権力の足下を少しずつ崩しているのもまた女性たちなのだ。

 本書が、新しい北朝鮮理解に役立って欲しいと願っている。

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