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五味洋治のページです。主に韓国での北朝鮮関連報道を訳していますが、日本語で紹介されない記事を私の目でセレクトしています。私の執筆活動、経歴についても掲載しています。最近のお勧めは、北朝鮮の軍事関連報道です。日本のメディアが伝えていない細かなものまで拾っています。私がかつてここに書いた金正恩の性格分析は今も十分通用します。筆者へのご連絡はこちらをクリックしてください

2016年8月5日金曜日

北朝鮮がミサイル発射を続ける理由とは

文責 五味洋治

北朝鮮が弾道ミサイルを3日朝黄海南道から日本海に向けて発射した。
最大1、300kmを飛んで行けるノドンミサイルとされている。
このノドンミサイルは1千kmほど飛行して日本の排他的経済水域(EEZ)内に落ちたことが確認されている。

北朝鮮が1998年人工衛星光明星1号(テポドン1号ミサイル)を発射した時、日本列島上空を通り過ぎたことはあるが、北朝鮮ミサイルが日本海の日本のEEZ内に落下したのは今回が初めてだ。


日本列島と在日米軍基地を打撃することができるという、北朝鮮側からのシグナルといえる。

EEZは排他的経済水域のことだ。

沿岸から200カイリ(約370キロ)までの範囲で、沿岸国に鉱物資源や水産資源の開発といった経済的な権利が及ぶ海域。 国連海洋法条約に基づいて沿岸国が国内法で設定する。 沿岸から12カイリまでの領海とは区別され、他国の船も航行の自由があり、科学目的の調査ならば、沿岸国の同意を得て実施できる。つまり日本の漁船が活発に活動している海域であり、今回も日本の漁船が被害に遭う可能性があった。

政府が強い危機感を持って、対応に当たったのも当然だろう。

安部晋三首相は、緊急国家安全保障会議(NSC)を開いた後「日本の安保に対する重大な威嚇であり許しがたい暴挙」と批判した。ノドンミサイルが日本列島近海に落ちたことを事前に察知できなかったことにも当惑していた。

北朝鮮は6月22日江原道元山から離弾道ミサイル(IRBM) 「火星-10」発射に成功している。

この時北朝鮮は「火星-10」が高い角度で発射され、最大高度1、413.6kmまで上昇飛行して、400km先の目標水域に正確に着地したと発表している。

 この火星-10を正常軌道で発射したとすれば、最大飛行距離が3500kmになると見られている。これはグアムの米軍基地が射程圏に入る距離であり、米国も危機感を強めている。

また、先月19日には黄海北道で韓国全地域を射程圏で置いた、スカッドとノドンミサイルを3発発射した。


これは有事の際米軍の韓国進入関門の釜山港などを打撃できるということと共に、サードが配置された慶尚北道星州郡にも攻撃を加えられる能力を見せつけたといえる。

繰り返されるミサイル実験の結果を、そのまま受け取れば、北朝鮮は日本、韓国、さらにグアムまで攻撃圏内に入れたことになる。

ミサイル開発の狙いについて、朝鮮総連の機関紙、朝鮮新報は以下のような記事を同新聞のサイトに掲載した。長いがポイントを引用してみる。

〈そこが知りたいQ&A〉「火星-10」試験発射の目的は

戦争抑止、経済建設にまい進

朝鮮が中長距離弾道ロケット「火星-10」の試験発射に成功した。試験発射の目的と朝米関係に与える影響などをQ&Aにまとめた。

– 今回、米国は「国際的義務に反する挑発行為」(アーネスト米大統領報道官)と非難し、日本は「わが国の安全保障に対する深刻な懸念」(中谷防衛大臣)との見解を示した。弾道ロケット試験発射の目的は?

核兵器の運搬手段である弾道ロケットの開発・配備は、朝鮮労働党が掲げる経済建設—核武力建設の並進路線に沿ったものだ。朝鮮は世界最大の核保有国である米国と交戦状態にあり、米国は朝鮮に対して核威嚇を続けている。戦争を抑止し、平和的環境下で経済建設にまい進するためには、米国に脅威を与えるレベルの核攻撃能力を備えていなければならない。朝鮮の弾道ロケットは、米国の戦争挑発を無力化することを目的としている。

米国をはじめとする敵対国は、「北の脅威」を騒ぎ立てながら、一方で朝鮮の核ミサイル技術は「未完成」だと吹聴してきた。朝鮮は、米・南合同軍事演習が「史上最大規模」で敢行された3月から、対抗措置として「核抑止力の可視化」を実行した。小型化された核弾頭を公開、弾道ロケット大気圏再突入の環境シュミレーション実験、大出力の固体ロケットエンジンの地上噴出・分離実験などを行い、すべて成功させた。

当時、金正恩委員長は、実験の現場に立ち会い、「核攻撃能力の信頼性を高めるため、早い時期に核弾頭爆発実験と核弾頭が搭載可能な様々な弾道ロケットの試験発射を断行する」と公言、開発者らに事前準備を指示していた。3月の「可視化」は、核弾頭の小型化や大気圏再突入など、敵対国が主張する「未完成論」を技術工程別に論駁するものであったが、「火星-10」の試験発射は、朝鮮の核攻撃能力を実際の飛行軌跡によって示した。

– 「火星-10」は400km飛行したという。外部で推定されていた射程距離よりも短いが。

「火星-10」の試験発射は、弾道ロケットの最大射程距離をシミュレートして、高角発射体制で行われた。「高角発射」とは、正常軌道より高い角度でロケットと弾頭を分離させる方式だ。「火星-10」は頂点高度1,413.6kmまで上昇した後、大気圏に再突入し、400kmキロメートル前方の予定された目標水域に落弾した。正常角度(45度)で発射していたならば、射程距離3,000~4,000kmに達したと専門家らは判断している。

「高角発射」は、米国の意表を突いたはずだ。金正恩委員長の「指示」があった後、米国は偵察衛星などを使い、弾道ロケットを統括する朝鮮人民軍戦略軍の動向を監視していた。一方、朝鮮東海に第7艦隊のイージス艦を展開し、「ミサイル防衛作戦水域」を設定した。朝鮮の東海岸から発射された弾道ロケットが米国の太平洋司令部があるハワイや西太平洋軍事戦略の拠点であるグアム島に向けて発射された場合、空中で撃墜する体制がとられたということだ。

試験発射された弾道ロケットが迎撃されたら、人民軍は反撃に打って出る。それによって米軍が朝鮮の核施設や戦略的軍事拠点を狙って空爆を行うようなことになれば、人民軍は全戦線で総攻撃を開始するだろう。ところが、全面戦争の引き金になりかねない迎撃体制をとった米国の監視網を抜けて、「火星-10」は大気圏外に達した。高角発射された中長距離弾道ロケットは、太平洋には向かわず、朝鮮東海の公海上に落弾し、日本など周辺国の安全に些細な影響も与えなかった。

– それでも国連安保理では報道機関向けの非難声明が発表された。

過去の制裁決議同様、何ら正当性がない米国式二重基準が適用されたに過ぎない。2006年以降の一連の安保理決議は、朝鮮に対して弾道ミサイル技術を使ったいかなる発射も禁じているが、この規定に国際法上の根拠はなく、国連事務局も対朝鮮制裁の法的基礎については、いまだ説明できずにいる。

朝鮮の弾道ロケット開発は、米国の核攻撃を防ぐためのものであり、主権国家の自衛権行使は国際法上、正当なものとして認められている。米国は、今年に入り、大陸間弾道ミサイル(ICBM)「ミニットマン3」の発射実験を繰り返し行った。朝鮮と米国は交戦状態にあり、「ミニットマン」の脅威が存在する以上、「火星」ロケットの開発が中断されることはない。

今年3月、安保理で「史上最強の制裁決議案」が採択されたが、朝鮮の核抑止力強化プロセスを止めることはできなかった。これまでは、朝鮮の人工衛星打ち上げを「事実上の弾道ミサイル発射」だと非難してきたが、今後、米国式二重基準の矛盾は一層はっきりと表れてくるだろう。朝鮮が米国や他の常任理事国と同じように弾道ロケット試験発射を通例化すれば、米国は「効果なき」制裁以外の対応を迫られることになる。

– 「火星-10」試験発射の成功が、朝米関係に与える影響は?

米軍司令部中枢や米情報機関の高官らは、以前から朝鮮が核兵器の小型化に成功し、核搭載可能な長距離弾道ミサイルの実戦配備が進められているとの認識を示していた。交戦相手が、米国本土や海外の米軍基地を攻撃する可能性があると判断したならば、まずは紛争回避の方法から探るのが、安全保障政策の定石だ。

今回、「火星-10」試験発射成功によって、朝鮮の核攻撃能力が証明され、米国が進めてきた強硬路線の限界が露わになった。米国が朝鮮に対する敵視政策を見直し、緊張緩和のための実践的措置を取らなければ、今後も、金正恩委員長の「指示」が実行に移されていくだろう。「核弾頭爆発実験」や「様々な弾道ロケット試験発射」が続けば、米国はさらなる困窮に瀕することになる。

オバマ政権であれ、次期政権であれ、「火星-10」より射程距離が長い弾道ロケットが「高角発射」ではなく、正常角度で発射される状況を想定したくはないはずだ。朝鮮の核抑止力強化プロセスに対するモラトリアム(一定期間の猶予)設定が、焦眉の問題として浮上する可能性がある。

引用終わり

「朝鮮が米国や他の常任理事国と同じように弾道ロケット試験発射を通例化すれば、米国は「効果なき」制裁以外の対応を迫られることになる。」という下りに注目して欲しい。今年末の大統領選挙を目標にミサイル実験を重ね、米国との対話を実現したいという狙いのようだ。

その点、ミサイルが実際に攻撃手段として使われるかは疑問だ。猛烈な反撃を受けて、北朝鮮の崩壊につながるためだ。脅威が増しているのは間違いない。

どこかで対話路線に舵を切るのか、ぎりぎりまで現在の経済制裁路線を強めるのか、北朝鮮に影響力を持つ中国への働きかけを強めるのか、この3つほどしか手はない。

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