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五味洋治のページです。主に韓国での北朝鮮関連報道を訳していますが、日本語で紹介されない記事を私の目でセレクトしています。私の執筆活動、経歴についても掲載しています。最近のお勧めは、北朝鮮の軍事関連報道です。日本のメディアが伝えていない細かなものまで拾っています。私がかつてここに書いた金正恩の性格分析は今も十分通用します。筆者へのご連絡はこちらをクリックしてください

2016年8月8日月曜日

いつの間にか中韓関係が大変なことになっている。

 昨年9月に北京で行われた中国の対日戦争勝利70周年記念式典で、西側の指導者として唯一、朴槿恵大統領が天安門に立ち、笑顔を振りまいた。
 わずか1年前のことが嘘のように、最近の中韓関係は急速に悪化している。朴氏が米国政府の意向を受け入れて、高高度ミサイル防衛(THAAD)システムを年内にも韓国内に配備すると発表したからだ。これに対して中国は、「自国への脅威」として、人的交流の制限、相手国の製品の輸入規制、首脳会談の拒否と、あらゆる手段を使って圧力をかけている。中国は相手が自分より力が下だと見る国にどう対応するか、典型的な例ともいえる。

 まずこの文章から読んでみよう。

 「韓国政府の政策決定者は自国の安危と米国のTHAADを独断専行で結びつけ、このためには地域の安定を破壊することを辞さず、周辺の大国の安全保障上の利益を公然と損なっている」

 「米韓によるTHAAD配備決定の盲動性と冒険性は明らかだ。この決定は韓国国民の心中の安全上の譲れぬ一線にも深刻な打撃を与えた。8月1日の韓国の世論調査では、朴槿恵大統領の支持率は低迷を続け、60.7%の回答者は朴政権にマイナスの評価を与えた。20歳前後の若者の支持率がすでに10%を割り込んでいることは注目に値する。また、韓国国民は政府が国益を売ってTHAADを配備する誤った決定に強く反対している。」

 これは中国共産党の機関紙、人民日報の「鐘声」というコラムの一節だ。http://j.people.com.cn/n3/2016/0803/c94474-9094816.html

 朴大統領を名指しで批判した記事に、韓国のメディアは一斉に反発し、中国側の報復がどの程度になるか、観測記事も流し始めた。怒りと恐怖が入り交じった反応だった。

 中国には、扇情的な記事を書くタブロイド紙もあるが、人民日報は公式な新聞だ。地方政府や企業も含め、韓国に対して厳しく当たれと指示したのに近い。韓国政府は、この記事に反論している。http://jp.reuters.com/article/thaad-cn-kr-idJPKCN10I11O

 さらに韓国側を刺激したのは、タブロイド紙の代表、人民日報系の環球時報が6日付けの一面で、サード配置に反対する韓国・民主党議員らの訪中をめぐる韓国内の摩擦を大々的に伝えたことだ。

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 同新聞は、サード配置をめぐり中国側と意見交換を図るつもりなのに「韓国では売国奴扱いされている」と批判した。一行は今週訪中する予定で、この新聞は、一行の中国での2泊3日の日程を詳細に報道した。韓国紙は、「韓国内の意見分裂をあおっている」と批判し、メディア戦争の様相を示している。

 韓国側は、中国側の出方に不安も隠せないようだ。まずは、競争力の高い韓流コンテンツだ。文化体育観光部傘下韓国コンテンツ振興院によれば国内コンテンツ産業の中国(香港含む)輸出額は、2014年基準約13億4123万ドル(約1兆4481億ウォン)で全体輸出額中26.2%を占めた。4年後の2019年には2475億ドル(約274兆5022億ウォン)で急成長すると期待されている。

地域・国家別には日本(約15億9747万ドル)次に高い。

韓流コンテンツを中国政府が規制をかける動きを見せている。関係業界は、市場の多角化や、中国企業との提携を強めて、ローカライズ(地元化)を急いでいるが、急激な政治の動きについていけていないのが実状だ。

中国は7月中旬、モンゴルのウランバートルで行われたアジア欧州会議(ASEM)首脳会談に出席した李克強・中国首相が、韓国側が要請した朴氏との中韓首脳会談を「日程が合わない」として拒否している。

来月4~5日中国、浙江省杭州で主要20ケ国(G20)首脳会議が開かれる。ここでは中韓首脳会談が開かれるのは間違いないが、中国側は、ここで韓国の譲歩を引き出したいようだ。

 韓国側も「正常な国家ならば、自国国民の生命を保護するための安保問題と関連して、隣の国家の顔色を見る必要はない」(キム・ソンウ大統領府広報首席)と引かない構え。

韓国にとって苦い思い出は、2000年に起きたニンニクをめぐる貿易摩擦だ。この年、韓国が中国産ニンニクにかける関税を10倍程度引き上げた。この措置に対して中国政府は一週間後、韓国製携帯電話とポリエチレンの輸入を全面中断した。当時韓国が中国から輸入するニンニクは1000万ドル未満だったのに中国が閉め出した輸出規模は5億ドルを超えた。

このため、ゲームIT、観光、化粧品などの中国に依存する業界は、中国側の出方を慎重にうかがっている。
http://japanese.joins.com/article/117/218117.html

中国が軍用機を韓国の防空(防共)識別区域に侵入させたり西海で軍艦を動員して、武力デモをする方式で軍事挑発に出る可能性も提起する新聞もある。

中国からの風圧に耐えられるのか、朴槿恵大統領の手腕が問われている。

文・五味洋治

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