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2017年1月8日日曜日

金正恩 暗殺は不可能

 

 昨年8月に脱北し、韓国入りした前駐英国公使の太永浩(テ・ヨンホ)氏が、昨年末から記者会見を開いたり、国会で証言するなど、活発な活動を繰り広げている。エリート外交官は、北朝鮮の現実について話した内容を現段階でまとめて見る。
 太氏は1997年に米国に亡命した張承吉(チャン・スンギル)元駐エジプト大使以来、最高位の亡命者となる。韓国に来た脱北者としては黄長ヨプ労働党書記以来だ。
一方、北朝鮮は、太氏について「公金を持ち逃げした特級犯罪者」と攻撃している。
 先月19日、国会情報委員会で証言したあと、太氏は先月27日には、韓国統一省で、記者会見を開いた。その後もKBS放送など各メディアとの単独インタビューに応じている。
 北朝鮮は、これまで高位脱北者の暗殺を行ったことがあるが、太氏は、「今後、身辺に脅威を受けても対外公開活動をする」「5年以内に金正恩政権打倒を目指す」と話している。表情も明るく、これまでの脱北者とはかなり違った印象を受ける。各社のインタビューを読むと、異常に高揚しており、証言内容についても大丈夫なのかと思わせる節がある。

 北朝鮮の幹部たちの生活について「北朝鮮では職位が上がるほど、高位層であるほど監視が厳しくなり、自宅内の盗聴が日常化している」と明かした。玄永哲人民武力部長(66)が処刑(2015年4月)された理由について「家で(盗聴されていることを知らずに)よくない話をしてたのが原因だった」と説明した。ただ、実際に何を話したのかは知らなかった。
 太氏は、2014年に平壌に戻った。金正日時代には公式行事が行われる場所に入る時、正装した保安要員らが入場者の身分証を検閲していた。
 しかし、今は軍服を着て銃を持った要員が配置され、人びとが「金正恩万歳」と叫んでいる間も機関銃を持って向けて警戒をしていた。
 自分の安全のため、相当警戒しているようだ。
 太氏によれば北朝鮮の外交官給与は「国ごとに違うが、一般的に大使は月900~1100ドル、公使は700~800ドル」と明らかにした。
 そして、「海外に勤務する北朝鮮外交官はあらゆる手段と方法を動員してカネを稼ぎ、生き残りを図る」と説明した。
 北朝鮮にいる政府の幹部の業務についても触れた。
 「外務省職員は業務上米CNN放送も見て、インターネットも使うが、労働党中央党幹部は、業務との関連性がなければCNN放送が放送されている部屋には入れない」という。外部からの情報は徹底遮断されているようだ。
 ただし、幹部だけが見られる資料がある、局長級以上は資料通信や参考通信と呼ばれるものだ。海外のニュースが、そのまま掲載されている新聞と思われる。
 もちろん一般市民には海外の事情や、韓国のことはほとんど知らされない。
 最高指導者、金正恩氏の母親は在日コリアンの出身で、北朝鮮ではいまだに出身が隠されている。この点について「金正恩としては自分の父親とともにいた老幹部がいるなかで、母親の存在を話せないでいる」と語った。 海外にいる北朝鮮の人たちは、インターネットが使えるのかという質問に対しては、「今はスマートフォンの時代だ。これを使えば、インターネット閲覧は簡単にできる。自分も韓国メーカーLGの携帯で、ネットを見ていた」という。
 金正恩の叔父、が2013年暮れに処刑された。この事件について、太氏は「北朝鮮に衝撃を与えた事件だった。金氏一族内で権力闘争は以前からあったが絶対公開しなかった。ところが張成沢の処刑は公開し、一気に始末をつけた」
 英国の新聞、サンデータイムズは、北朝鮮の英国大使館が核技術を盗み出すため100万ポンド(約1億2700万円)を英国国防省および海軍関係者に贈賄する工作を行ったと報道した。これについては否定した。 
 ただ北朝鮮の外交官は、本国の国防力発展のための最新科学技術と国防技術を収集することを課されていることは認めた。
 国連などからの制裁は、少なからぬ影響を与えていた。太氏は「対北朝鮮制裁以後、英国で大使館の職員が、英国の現地銀行300支店と口座開設について交渉したがすべて拒絶された」と明かした。
 これらの口座は裏金づくりなどに使われることが疑われたようだ。
 さらに、北朝鮮から海外に出ている外交官は「一般的に1年に10万ドル程度を祖国に捧げる」と語った。かなりな額を送金するよう求められているようだ。
 太氏は、8年間海外生活をしていた。このため、北朝鮮の権力層に関する内部情報については、あまり知らなかった。
 北朝鮮での韓流ブームにも触れている。かなりはやっているようだ。

 前公使は1月8日に放送されたチャンネルAというケーブルテレビとのインタビューで金正日総書記が韓国で制作された大河ドラマ、李舜臣を高位幹部に見せて、「これと同じ水準のものを作れ」と指示したと明らかにした。幹部たちも見たそうだ。
 しかし韓国の水準が余りに高かったため、新しいドラマがこの10年間制作できなかったという。
 また、金正恩がどこに住んでいるかは誰も知らないと話している。それゆえクーデターや、暗殺は不可能だということだ。

 「北朝鮮内部でも韓国のドラマをこっそりと見る。一般の住民も10余年前から『冬のソナタ』『秋の童話』をかなり見ている。北朝鮮の青年の言葉が「チャギヤ(あなた)」「オッパヤ(兄さん)」「ハルコヤ?(する?)』という言葉を使う」と韓国風の言葉を話している。

 今後韓国の対北朝鮮政策は融和に向かうと予想した。さらに、北朝鮮側も、今年の新年の辞で金正恩が肉声による新年のあいさつで「どうすればわが人民を神聖に、より高く尊ぶことができるか憂いで心が重い」「いつも気持ちだけで能力が伴わないというもどかさしさと自責の中で、昨年1年を過ごした」と語ったことを挙げ、「米国と韓国との対話を模索する」と語った。

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