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2017年8月1日火曜日

中国が北朝鮮問題の責任を取らない理由 自分たちも核に脅されてきた。


 北朝鮮の核、ミサイル開発をめぐり、中国は「アメリカの責任だ」と主張している。
 身勝手な言い分だと思うかも知れないが、歴史的には真実が含まれている。そしてこの理屈は、現在の北朝鮮とも共通する。「アメリカのせい」というのは、自分たちの核開発でも同じ思いなのである。


 中国は「核兵器は、自国の独立を最終的に保障するための不可欠の手段」と考え、1950年代の中頃から、真剣な核戦略にかんする内部議論を続けている。


 中国政府は朝鮮戦争(1950-1953年)の直後から、自主的な核抑止力を構築することを真剣に考慮した。朝鮮戦争の最中、マッカーサーは中国を核攻撃することを提唱し、計26発の核兵器を使用する計画も立てた。


 1952年の大統領選に勝利したアイゼンハワーも、「停戦に応じなければ米軍は核を使う用意がある」と中国政府を脅して、朝鮮戦争の停戦交渉を行った。(ちなみにケネディ政権も1963年、中国がインドを攻撃した場合、アメリカが中国を核攻撃することを、真剣に討議していた)。


 中国は、米国の姿勢い強い危機感を抱いた。

 核兵器製造計画は、1950年代中頃に開始された。57年にソ連は中国の核開発を援助する約束をしたが、59年には態度を豹変させ、中国の核計画に真っ向から反対するようになった。
 
 このころから米ソ両国は、核兵器独占主義の意図を露骨に表明し、同盟国の自主的な核抑止カ獲得努力を妨害するようになった。

 米ソ両国にとっては、同盟国が核を持てず、核武装国からのニュークリア·ブラックメールに屈服せざるをえない状態に置いておくほうが、米ソの覇権維持に便利だからである。

 1963年、中国政府のスポークスマンは、「たとえ100年かかっても、中国は原爆をつくる努力をする。中国はソ連指導者の指揮棒に向かって頭を下げることはない。アメリカ帝国主義の核恫喝の前で土下座することもない」と語っている。

 中国外交部長の陳毅という人物はこのころ「中国人はたとえズボンをはかなくても核兵器をつくってみせる」と決意を表明した。

 実際に中国は、核兵器製造の努力を続け、1964年に最初の原爆実験に成功した。これは東京五輪の開催期間中であった。

 66年に最初の核ミサイルを完成し、67年には水爆実験にも成功した。

 中国は70年に人工衛星打ち上げに成功して中距離弾道ミサイル製造能力を持つことを世界に誇示し,80年には大陸間弾道ミサイル(ICBM)を製造し始めた。84年には、潜水艦から発射する核ミサイル(SLBM)の実験に成功している。
 
 北朝鮮は中国がたどってきたプロセスを10年ほどで実現している。中国は、「アメリカの核の恫喝に対抗して、核開発をしている」という北朝鮮の論理を批判できないのだ。
 
 中国の核開発の理由は4つあるという。「中国の『核』が世界を制す」(伊藤貫著)
 以下この本から抜き出してみる。
 

①アメリカとソ連(ロシア)は核武装した覇権主義国家であり、中国がこれら2国を牽制するために、自主的な核抑止力は不可欠である。自主的核抑止力なくして、中国の自主独立はありえない。現在の国際社会で自主的な核抑止力を持たない国は、真の独立国として機能できない。

②1958年以降、ソ連は中国の核兵器開発に反対するようになり、「中国はソ連の核の傘」に依存すればよい。中国が独自の核抑止力を構築する必要はない」と主張してきた。しかしこの「核の傘」という軍事コンセプトは、実際には機能しないものである。たとえアメリカが中国を先制核攻撃した場合にも、ソ連がそれに報復するためアメリカに核ミサイルを撃ち込むことはありえない。米ソ両国は、同盟国を守るために核ミサイルの撃ち合いをするような愚かな国ではない。ソ連政府が中国に提供するという「核の傘」は、ソ連の利己的な核兵器独占状態を維持し、非核の中国を、核武装したソ連の国家意思に従属させようとする覇権主義的トリックにすぎない。


③1950年代から70年代までの中国は貧しく、中国が、限られた予算を使って米ソの軍事力に対抗する国防力を得るためには、通常兵器に投資するよりも核兵器に投資したほうが、はるかに高い投資効果を得られる。通常兵器に1 00億ドル投資しても中国は米ソからの先制攻撃を抑止できないが、核兵器製造に100億ドル投資すれば、中国は米ソからの先制攻撃を抑止できる。


④現在の国際社会で真の発 言権を持っているのは、核武装国だけである。核兵器を持たない国は、核武装国に恫喝されれば屈服するしかないから、真の発言権を持てない。中国が現在の国際社会で真の発 力を得ようとするならば、自主的な核抑止力を持たなければならない。
  
 中国政府は、日本政府からの批判をまったく相手にしなかった。日本政府は「中国の行動は、核不拡散の流れに逆行するものだ」と批判したが、「米国の核の傘に入っている日本に中国を批判する資格はない」と反論した。


 中国は半世紀がかりで「米露の核戦力に対抗できる自前の核戦力を構築する」という努力を続けている国である。75年がかりで、「2020年代に米国勢力をアジアから駆逐し、中華勢力圏を確立する」という国家目標を追求しているのだ。

 中国は現在数千基の核ミサイルを保有しているとされる。移動式の多弾頭,核ミサイルに載せるための小型の高性能核弾頭設計技術をアメリカから盗んだとされる。

 1999年の連邦議会の報告書によれば、中国のスパイは70年代末に小型の中性子,核弾頭の設計技術をローレンス·リバモア核研究所から盗んだ。さらに80年代の後半期に、米国のもっとも優れた核弾頭設計技術を、少なくとも6種類盗んだとされている。

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