2018年11月2日金曜日

韓国大法廷判決があぶり出した、日韓国交正常化の矛盾

ふだん、このブログは韓国のことを書かないが、ちょっと思ったことを書いてみる。


韓国の大法院(最高裁に相当)が出した、日本企業に対する元徴用工への初の賠償判決の波紋が収まらない。確かに、国と国とが「賠償を請求しない」と約束したことを、今回の判決はひっくり返している。ただ、日本の戦後処理の方法として見ていくと、全く違った様相を見せる。日本側が、個人の賠償請求権をあいまいな形で決着させていたことだ。日本が「問題は解決済み」と主張するしかない理由もここにある。

この判決を考えるには、少なくとも3つの要素がある。最初は植民地時代に日本が朝鮮人に対して行った徴用、強制労働の問題。2つ目は日本と韓国間の戦後処理の方法が適正だったか。3つ目は、今回の判決の評価だ。

元徴用工の韓国人は21万7千人とされ、そのうち3500人が存命している。本人の証言や研究者の聴き取り、過去の裁判の過程で徴用工への強制的な労働や、賃金の未払いは事実であると認定されている。
もちろん徴用された方法や、日本での待遇はさまざまだが、一般的に戦争中の人手不足の中で、日本人がいやがる炭鉱労働や、建設現場に駆り出されたことは歴史的事実である、ここにはもう争いはない。

日本政府は当然、3番目に焦点を当てている。判決がこれまでの約束を覆す内容だと批判している。安倍晋三首相自ら「国際法上あり得ない判決」と言っていることからも分かる。

過去には韓国は、この問題は解決済みとする日本政府の考え方を受け入れていた。2005年に進歩系の盧武鉉政権が、再調査しているが、個人に対する補償義務は「韓国政府が負う」と整理している。

 この時の韓国政府の見解によれば、「慰安婦、サハリン残留韓国人、韓国人原爆被害者」は請求権交渉の対象に含まれなかった、とした。ただ元慰安婦らについては日本側に対応を求める方針を示す一方、元徴用工の賠償請求権については日本が、1965年の日韓国交正常化の際に韓国に供与した無償3億ドルに「包括的に勘案された」と明言していたのだ。

それゆえ、日本政府は「この問題は100%韓国政府が責任を持つべきだ」(河野太郎外相)と強く反発している。日本のメディアの報道も、この主張にほぼ沿った内容だ。
ソウル発の原稿には、韓国の国内事情も加味されている。文在寅大統領の前任である朴槿恵大統領時代に、日韓関係を悪化させないために、大法院の判決を意図的に遅らせていた疑惑が発覚したため、判決内容が厳しくなった。
日本に対する厳しい判決は、国内政治の反映だという指摘だ。これも我々の耳に入りやすい論議だ。

さて、それでは2番目を見ると、数多くの疑問が沸いてくる。日本と韓国は1965年に国交正常化を果たし、3億ドルの無償経済支援を行った。同時に日韓請求権・経済協力協定を結んでいる。この中で「請求権は、いかなる主張もすることができない」と盛り込まれていた。

請求権はいわば戦後賠償だが、日本政府はこれを表に出したくなかった。それは、韓国への植民地支配は当時の国際法に照らしても合法であり、徴用は日本国民にも行っていたからだ。当時朝鮮半島に住む人は日本人になっていた。未払い賃金については一定の資料のも残っており、日本政府は個々人への直接の賠償も検討していた節が、当時の外交文書からうかがえる。

ところが金額面で折り合わず交渉は難航。このため、3億ドルの中に請求権を含む一切を含めることになった。後は韓国側で処理してほしいということにしていた。

3億ドルの性格については、椎名悦三郎外相が、「請求権が経済協力という形に変わったというような考え方を持ち、したがって、 経済協力というのは純然たる経済協力でなくて、 これは賠償の意味を持っておるものだというように解釈する人があるのでありますが、法律上は、何らこの間に関係はございません。あくまで有償・無償5億ドルのこの経済協力は、経済協力でありまして、韓国の経済が繁栄するように、そういう気持ちを持って、また、新しい国の出発を祝うという点において、 この経済協力を認めたのでございます」と答弁した(第50回国会参議院本会議1965年11月19日)」

請求権についても991年8月27日の参院予算委員会で、当時の柳井俊二外務省条約局長は、日韓請求権協定の第2条で両国間の請求権の問題が「完全かつ最終的に解決」されたとのべていることの意味について、「これは日韓両国が国家として持っている外交保護権を相互に放棄したということ」であり、「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたものではない」と明言している。

国と国との約束で、請求権は使えなくしたのだが、権利としては残っている。この分かりにくい状態がいつか破綻するのは目に見えていた。かといって全て見直したら、戦後の歩みが全て否定される。

やはりここは、被告企業と原告との和解を模索するのが一番いい。日本の政府も、こういった裏事情を全部認め、理解を求める方が結局は得策ではないか。

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